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Date: Thu, 9 Jul 2015 07:24:20 +0900
From: 日本語用論学会広報 <webmaster@pragmatics.gr.jp>
Subject: [PSJ-News:00171] 「話しことばの言語学第11回ワークショップ」開催のお知らせ
Sender: t.kanamaru@gmail.com
To: psj-news <psj-news@pragmatics.gr.jp>
Message-Id: <CANFDreqxnHHfHfaA2shKvXit0xynHviggLMr=DniSwUoTLdLyg@mail.gmail.com>
X-Mail-Count: 00171

日本語用論学会の皆様

慶應義塾大学の鈴木 亮子先生よりご紹介がありましたので,
会員の皆様にご案内をお知らせいたします.

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話しことばの言語学第11回ワークショップを下記の要領で開催いたします。
当日は夏の暑い盛りかと思われますが、皆様のご参加をお待ちしております。

〈話しことばの言語学 第11回ワークショップ 概要〉
テーマ:『話しことばの定型性』
会場:慶應大学日吉キャンパス 来往舎(らいおうしゃ)2F 大会議室
http://www.hc.keio.ac.jp/ja/hiyoshi_campus/guide/index.html
日時:2015年8月22日(土曜日):1:30〜4:40(予定)
*事前登録は不要ですが、資料等準備代として500円をお支払い頂きます。
問い合わせ先: hanashikotoba.gengogaku@gmail.com
詳細: https://sites.google.com/site/discbasedling/workshops/ws-11

〈プログラム予定〉
1:15    開場、受付開始
1:30 ~ 1:50 イントロダクション
1:50 ~ 2:30 第1発表
2:30 ~ 3:10 第2発表
3:10 ~ 3:15 休憩
3:15 ~ 3:55 第3発表
3:55 ~ 4:10 休憩
4:10 ~ 4:40 全体討論

〈発表要旨〉
イントロダクション
発表者:横森大輔(九州大学)
題目:「定型表現研究概観ーWray(2013)を基にー」
概要:定型表現研究の歴史は古く、言語に関わる様々な分野で行われてきた。
その歴史は2012年のAnnual Review of Applied Linguistics誌における12編の
レビュー論文や、Wray(2013)のリサーチ・タイムラインにまとめられている。
Wray(2013)では言語理論、言語障害、言語発達、第二言語習得、文化、コーパ
スの6つの分野における定型表現研究の重要な研究が紹介されている。本ワー
クショップのイントロダクションとして、Wray(2013)のうち、とくに言語理論
に関する研究として挙げられているものを中心に簡単に紹介する。
参考文献:Wray, Allison. 2013. Research Timeline: Formulaic language.
Language Teaching 46(3): 316-334.

第1発表
発表者:遠藤智子(日本学術振興会・筑波大学)
題目:「談話の構築と定型表現ー中国語会話のデータから」
概要:定型表現と呼ばれる表現には、形式も機能も様々なものが含まれる。本
発表では、中国語の会話データに基づき、談話標識(特に二人称代名詞と認識・
発話動詞によって構成される談話標識)とイディオムの二種類を取り上げる。
英語ではyou knowやyou see, you say等が談話標識として間主観的機能を持つ
ことが指摘されているが(Fitzmaurice 2004)、中国語でもni kan “you see”,
ni shuo ”you say”, ni xiang “you think”等の表現が語りの中の比較的早
い時点で聞き手の注意を制御する談話標識として使われる。これに対し、イディ
オムは語りの終結部で語りの内容を総括する働きを持って使われる(cf. Drew
and Holt 1998)。この観察から、語りの構造と定型表現の意味・機能の限定性
および多様性との関連を論じる。

第2発表
発表者:柴?礼士郎(明治大学)
題目:「So was, I’m, I’m just getting a little confused here
 ?自己反復は定型表現なのだろうか?」
概要:自己反復(そして他者反復)の事例報告は多数存在し、言語毎に用いられ
方に違いのある可能性もあるが、広義に解釈すると反復には普遍性のあることも
指摘されている(e.g. Rieger 2003; Fujimura-Wilson 2007; Kjellmer 2008;
Baba 2010)。そこで、本発表では現代アメリカ英語における「人称代名詞+繋辞」
表現に注目し、以下の考察点を中心に、その反復使用の調査報告を行う。一点目
は「人称代名詞+繋辞」表現が定型表現とみなせるほどに使用されているか否か
である。二点目は「人称代名詞+繋辞」表現が話しことばに特有のものであるか
否かである。三点目は「人称代名詞+繋辞」表現が用いられやすい談話環境が特
定できるか否かである。

第3発表
発表者:大野剛(アルバータ大学)・鈴木亮子(慶應大学)
題目:「会話と定型性」
概要:言語の本質を理解するための手がかりは、言語の最も基本的な形である日
常会話に求める ― この当たり前のように見えて実践されているとは言いがたい
手続きを使って分析を試みる。日常会話ではいわゆる定型表現が非常に多く見ら
れることから「言語は文法規則で生成される」という言語学の最も一般的な考え
方への疑問をもたざるをえない。同様の報告が英語に関しても多くなされていて
(Altenberg 1998, Erman and Warren 2000, Cameron-Faulkner et al. 2003,
Bannard and Lieven 2009, and Hopper 2011)、実は「定型性」こそが言語使用の
メカニズム、更には言語の本質そのものを理解する手がかりになるとさえ考えら
れる。つまり、日常会話で使われる言語の定型性の特質を明らかにすることは、
話しことば基盤の言語モデル形成の第一歩になりうる。定型性を定義すること自
体が難しい(Wray 2013)ことからも、そのさらなる理解をめざして、個別の定型
表現に焦点をあてるだけではなく、会話データ全体に観察される定型性を細かく
観察・分析することの必要性も論じたい。


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