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Date: Thu, 27 Aug 2015 00:07:08 +0900
From: 日本語用論学会広報 <webmaster@pragmatics.gr.jp>
Subject: [PSJ-News:00179] 「第2回京都語用論コロキアム--動的語用論の構築へ向けて」開催のお知らせ
Sender: t.kanamaru@gmail.com
To: psj-news <psj-news@pragmatics.gr.jp>
Message-Id: <CANFDreqc515drj0oQdAT=+Y9-Umhq6_sYnNx2AKg6UbaUNwaKg@mail.gmail.com>
X-Mail-Count: 00179

日本語用論学会の皆様

京都工芸繊維大学の田中 廣明先生よりご紹介がありましたので,
会員の皆様にご案内をお知らせいたします.

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皆様
 田中廣明(京都工芸繊維大学)です。

 「第2回京都語用論コロキアム(Kyoto Pragmatics Colloquium: KPC)--動的語用論
(Dynamic Pragmatics)の構築へ向けて」(京都工芸繊維大学・田中廣明研究室主催)
を、第1回目と同じく、京都工芸繊維大学で、来る9月26日(土)に下記の要領で開催
いたします。ふるってご参加ください。

 今回は、「動的語用論の構築へ向けて」と題し、第一部で「コミュニケーションの
ダイナミズムと言語変化のメカニズム」を中心に、第二部で「コミュケーションのダ
イナミズムと言語発達のメカニズム」を中心に、二つの側面に分けてそれぞれの講師
に切り込んでいただきます。第一部では、Enfield (2014)のNatural Causes of
Meaningの問題意識を中心に、木本幸憲氏(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)
による同書の報告と北野浩章先生(愛知教育大学)、岡本雅史先生(立命館大学)に
よるコメントと全体ディスカッションを行います。さらに、第二部では、特別講演に
松井智子先生(東京学芸大学)をお迎えし、「語用能力の発達と障害:実験語用論の
手法」と題して、特別講演を行っていただきます。

 なお、上記Enfield (2014)は80ページほどの短い小冊子で、以下のサイトから自由
にダウンロードが可能です。ご参加いただける方は、ダウンロードされることをおす
すめしますが、前もってお読みいただくことは求めておりませんし、また前提となる
知識は全く必要ありません。ご自由ご闊達なご意見を求めております。またその下の
サイトは、Enfield氏ご自身による紹介ビデオです。さらに、Nick Enfield氏は、今
年度の日本語用論学会第18回大会(2015年12月5日(土)、6日(日)於・名古屋大学)
へ特別講演講師として招聘が予定されております。

・Enfield(2014) Natural Causes of Meaningのダウンロード可能なサイト:
http://pubman.mpdl.mpg.de/pubman/item/escidoc:2075715:6/component/escidoc:2076088/48-3-207-1-10-20141201.pdf

・Enfield氏による紹介ビデオ:
https://twitter.com/dingemansemark/status/539433893103812610

・日本語用論学会:
http://www.pragmatics.gr.jp/

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第2回京都語用論コロキアム(Kyoto Pragmatics Colloquium: KPC)--動的語用論
(Dynamic Pragmatics)の構築へ向けて

日時:2015年9月26日(土)1:30 P.M.?5:30 P.M.
場所:京都工芸繊維大学(松ヶ崎キャンパス)60周年記念館1階記念ホール

交通案内
http://www.kit.ac.jp/01/01_110000.html

最寄り駅から松ヶ崎キャンパスへの案内
http://www.kit.ac.jp/02/matugasaki.html

キャンパスマップ
http://www.kit.ac.jp/01/gakunaimap/matugasaki.html

受付:1:00 P.M.?
趣旨説明:1:30 P.M.?1:40 P.M.
「動的語用論の構築へ向けて」:田中廣明(京都工芸繊維大学)

第一部:1:50 P.M.?3:45 P.M.
「コミュケーションのダイナミズムと言語変化のメカニズム」
【集団討議・Enfield (2014)の報告とディスカッション】
報告者:木本幸憲(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)
「言語変化の理論化に向けて:Enfield (2014)書評」
ディスカッサント:北野浩章(愛知教育大学)・岡本雅史(立命館大学)

第二部:4:00 P.M.?5:30 P.M.
「コミュケーションのダイナミズムと言語発達 のメカニズム」
特別講演:4:00 P.M.?5:30 P.M.
松井智子先生(東京学芸大学教授)
「語用能力の発達と障害:実験語用論の手法」

連絡先:田中廣明(京都工芸繊維大学)
  〒606-8585 京都市左京区松ヶ崎橋上町 京都工芸繊維大学
  Tel. 075-724-7252(田中廣明研究室直通)Email: htanaka@kit.ac.jp
参加費は無料。事前登録必要なし。
終了後、懇親会4,000円(場所は未定。懇親会参加希望者は田中廣明まで上記
メール宛先にご連絡をいただけたら)

世話人兼発起人:田中廣明(京都工芸繊維大学)・岡本雅史(立命館大学)・
西田光一(下関市立大学)・小山哲春(京都ノートルダム女子大学)・
五十嵐 海理(龍谷大学)

発表要旨
「言語変化の理論化に向けて:Enfield (2014)書評」
木本幸憲(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)
 本発表は、Enfield (2014) Natural causes of languageの書評を行う。複数の
時間フレームを想定し、従来から指摘されてきた系統樹モデルに変わる言語変化の
モデル化を試みている。特に言語発達、話し手・聞き手間の相互行為など、ミクロ
かつ動的な要因に目を向けながら、言語学の黎明期から議論されてきた言語の通時
的変化・バリエーションに関わるメカニズムを具体的に明らかにしようとしている。
本発表では、この議論の背景となる比較言語学の手法、比較方法(Comparative
method)や、関連する研究文脈(e.g. 認知言語学における Usage-Based Model)
にも言及しつつ、Enfieldの議論を進めていきたい。

「語用能力の発達と障害:実験語用論の手法」
松井智子(東京学芸大学)
 コミュニケーションにおいては、言葉や文の意味が「文脈」によって変化する。
つまり、文が意味することと話し手が意味していることは必ずしも同じではない。
それでも大抵の場合、聞き手は会話のなかで、言葉や文の意味を手がかりに、話し
手の意味していることを、推測することができる。このメカニズムを明らかにする
ことが語用論の目標である。
 本講演では、聞き手が文脈を含めたさまざまな手がかりを総合し、推論的に話し
手の言わんとすることを理解するために必要な能力を「語用能力」としてとらえ、
それがどのように発達するのか、そしてその心理基盤となるものは何かを考えてみ
たい。これらの問いに対する答えを探るためには、心理的実験と自然会話の分析を
組み合わせた実験語用論の手法が有効である。この手法はまた、語用能力がうまく
機能しない発達障害(語用障害)の特徴を明らかにするためにも役に立つ。そこで、
実験語用論のアプローチを通してこれまでに明らかになった語用能力の発達と障害
の特徴について報告し、その結果や方法について皆さんと議論をしながら今後の研
究の展望について考えてみたい。
 語用能力を支える心理基盤の候補として挙げられているのは、「心の理論」と呼
ばれる自己や他者の心を理解する能力である。心の理論は、文化や言語に関わらず
普遍的な発達を遂げると言われている。1歳の共同注意、2歳の欲求や感情の理解、
3歳の知識の理解、5歳の思考の理解は、心の理論の普遍的な発達の節目として理
解されることが多いが、コミュニケーションの視点から見ると、それらが語用能力
の発達の重要な節目でもあることがわかる。会話が成立するためには、自分の注意
をどこに向けるべきかを理解することや、自分や相手の欲求や感情を理解すること
が不可欠である。知識がない人、自信のない人からもらった情報は、信じないほう
が良いと判断できる力も必要だ。8歳以降に可能になる皮肉や複雑なうその理解も、
やはり心の理論という心理基盤に支えられていると考えられる。
 このように、人間の語用能力はかなりの程度、普遍的な発達段階を経ることが明
らかになりつつある。しかしその一方で、人間のコミュニケーションのスタイルが、
個別言語や文化の影響を色濃く受ける性質を持つということもわかっている。そこ
で、語用能力の発達においても、普遍的な側面と個別言語文化に固有な側面がある
と仮定したとき、それらを研究的にどのように切り分けることができるかという点
についても議論したいと考えている。


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