日本語用論学会会員の皆さま
(※ML専用アドレスから配信しておりますので、本メールへの返信はご遠慮ください。)
佐藤恵先生(獨協大学)より、「2021年度ひと・ことばフォーラムオンライン研究会『言語的コンプレックス』」のご案内を頂きましたので、会員の皆さまにお知らせ致します。
なお、重複してお受け取りの場合は、何卒ご容赦下さい。
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【リマインド・要旨追加】2021年度ひと・ことばフォーラムオンライン研究会「言語的コンプレックス」ご案内
2020年度より、新型コロナウィルス感染症拡大の状況を踏まえ、オンラインの年3回連続研究会を開催しています。2020年度の「マイノリティ言語を生きる」に続き、2021年度は「言語的コンプレックス」をテーマに下記のように開催いたします。コンプレックスという言葉は、日本語では劣等感、劣っていることに関する複雑な思い、inferiority
complexの意味で使われますが、英語のcomplexはより広い概念、複雑性、複相性をもととする概念です。グローバル化が進んだポストモダンな世界を考える最近の論考では、diversity、complexity、fluidityなどがキーワードですが、言語の劣等意識、言語に関わる複雑さの両義に絡めると、実は相互に関連している概念であるということが見えてきます。「言語コンプレックス」ではなく、「言語的コンプレックス」というテーマから立ち現れる言語に関する視界の拡がりを期待します。
第33回(2021年度第1回)移動とメディアの言語的コンプレックス 6月26日(土)
第34回(2021年度第2回)方言とメディアの言語的コンプレックス 10月30日(土)
第35回(2021年度第3回)言語史と言語的コンプレックス 1月22日(土)
2021年度第3回目(通算第35回)は、高田博行氏(学習院大学教授、ドイツ語史)、田中牧郎氏(明治大学教授、日本語史)、堀田隆一氏(慶應義塾大学教授、英語史)をお迎えし、三氏が提唱される「対照言語史」(contrastive
language
history)という視点から、劣等コンプレックスに端を発した語彙の拡充の尽力をトピックにして通言語(史)的にお話しいただきます。自らの母語の語彙力に関して知識人が抱いた劣等コンプレックスが各言語史を進展させていった、そのプロセスのなかで、三つの言語史にはどのような共通点と相違点が見られるのでしょうか。全体ディスカッションでは、言語的コンプレックスの克服のされ方等について議論し、ことばとアイデンティティをめぐって考えていければと思います。
総合タイトル:言語史と言語的コンプレックス−「対照言語史」の視点から
各発表タイトル(敬称略):
高田博行:哲学者ライプニッツによる語彙拡充の提案
田中牧郎:明治知識人による語彙拡充の苦心
堀田隆一:初期近代英語期における語彙拡充の試み
☆開催日時:2022年1月22日(土)10:00〜12:00
☆会場:ZOOM上で実施(オンラインで実施予定)
☆プログラム(敬称略):
10:00-10:05 趣旨説明:三宅和子(東洋大学)
10:05-10:30 話題提供者:高田博行(学習院大学教授)
10:30-10:55 話題提供者:田中牧郎(明治大学教授)
10:55-11:20 話題提供者:堀田隆一(慶應義塾大学教授)
11:20-11:25 休憩(10分)
11:25-11:55 全体ディスカッション(25分)
11:55-12:00 閉会・連絡
-----(以下希望者のみ自由参加)
12:15-13:00 ランチタイム懇談会
学期中のご多忙の時期とは存じますが、多くの方にご参加いただければ幸いです。オンライン開催の都合上、ご参加を希望される方は2022年1月19日(水)までに下記フォームよりお申し込みください。多くの方々のご参加をお待ち申し上げております。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdG1jComPjuzKg3ovHq0LNQOKdughLIhglEMtM6uA8wxReKZA/viewform?usp=sf_link
☆発表要旨
高田博行:哲学者ライプニッツによる語彙拡充の提案
今から300年ほど前のドイツ語は、抽象的内容を表現する学術的語彙を備えていなかった。ライプニッツ(1646-1716年)も、自らの思想を母語のドイツ語ではなくラテン語かフランス語で書かねばならなかった。この惨状を嘆かわしく思ったライプニッツは、語彙を拡充して母語の劣等性を克服するための処方箋を考えて示した。このシナリオは、外国語による抽象的な語彙を可能な限り自前のドイツ語要素(接頭辞・語根・接尾辞)で言い換えるという穏健な純化主義に基づくものであった。その後ドイツ語史は、語彙の拡充に関してはほぼライプニッツの提言どおりに展開していき、19世紀の後半には自前の言語で不足なく学問を前へ進めることができる「文明国」ドイツが形成されていた。
田中牧郎:明治知識人による語彙拡充の苦心
日本語は、古来、中国語から漢語の借用を重ねて、固有の語(和語)と共存させ、例えば、漢語「理」と和語「ことわり」のように、ほぼ同義の両者が緊密な関係を結ぶ場合も多かった。明治時代(1868-1912年)、知識人達は、例えば、「理性(Vernunft)」「理論(theory)」「論理学(logic)」のように、抽象的な概念を表す西洋語彙を漢語で翻訳して借用する苦心を重ねた。この翻訳借用語としての新漢語の増加と定着は、従来あった漢語や、漢語と和語との緊密な関係性にゆさぶりをかけ、「理」の意味を次第に変え、「理」を核とした語彙を拡充することにつながった。こうした明治の知識人による西洋語彙を取り入れるときの苦心は、日本語の語彙体系を一新させる力を持った。
堀田隆一:初期近代英語期における語彙拡充の試み
英語史上、初期近代英語期(1500-1700年)は語彙増加が最も著しかった時代である。ルネサンス期の爆発的な知識拡大に伴い、豊かな語彙が必要とされたからである。同時期のドイツ語では自前要素の活用という方針が採られ、明治期の日本語では漢語による造語の方針が採られたのに対して、英語の場合には、古典語であるラテン語やギリシア語の語形をそのまま取り込むという方針が採られた。この「節操のない」借用方針に対して世間からの批判などもあったが、結果としてみれば多くの古典語単語が英語の語彙に定着するに至った。英語は、古典語へのコンプレックスと語彙不足という2つの問題を、古典語彙を自身に同化させることにより克服しようと試み、ある程度成功したのである。
☆企画:佐藤恵(獨協大学)、東泉裕子(明治大学他)、高橋圭子(東洋大学他)
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